~第13回~ 文章を書く時もまず一杯
今回から、あの有名な齋藤茂太先生にお話を伺います。
精神科医としても有名ですが、社団法人アルコール健康医学協会会長としての顔もお持ちです。
どんなお話を聞かせていただけるのでしょうか?
大正5年生まれ。東京都出身。昭和17年昭和医大卒業、慶応大学医学部にて精神医学先行。昭和25年8月医学博士号取得。日本旅行作家協会会長。日本医師会病院部委員。社団法人日本精神病院協会名誉会長。社団法人アルコール健康医学協会理事長を経て、現在は同会会長。
~第13回~ 文章を書く時もまず一杯
四十数年前、過労で倒れた時に、主治医にタバコかお酒どちらかをやめなさい、と言われました。一晩考えてタバコをやめましたが、今考えるとよい選択だったと思います。お酒のほうが、プラス面が大きいと思うからです。
私は仕事で文章をよく書きますが、ポイントは最初と最後の五、六行をどうするかだと思います。それであらかた決まってしまう。私も最初の数行がなかなか書けません。作家の弟も同じだと言っていて、そういう時は一杯飲んで書くそうです。それから私も、書く時に一杯飲むようになりました。そうすると抑制が取れて書けるようになります。後で読み返すと、時にはひどい文章もありますが、それを推敲していけばよいのです。
確かに、「アルコールテスト」は絶対必要!
このように、飲酒の大きな効用の一つは抑制を取りさること。例えば、上司が新入社員の部下を連れて、飲みに行く。よくある風景ですが、アルコールが入って制御が取れると、その人の本性が出てきます。上司は部下がどんな男か、新入社員は上司がどんな男かがわかります。これはとても大切なことだと思うのです。結婚前の若い男女も同じことがいえるでしょう。これを私は「アルコールテスト」といって勧めています。
若い頃はむちゃもしました。戦争直後はアルコールを水で薄めて飲んでいましたが、私は当時、大学病院の研究室にいたので、そこからアルコールを盗み出して水やお茶で薄め、友人とよく悪酔いしていました。しかし、今は家で一合飲む程度。さっぱりした本格焼酎が好きでよく飲みますが、私は五・五で薄めて飲みます。仮に百歳を越してもお酒はやめないつもり。そのためには適正飲酒を守らなければ。奄美の泉重千代さんの真似をしてね。あの方も、本格焼酎をお湯か水割りで、グラス一杯と決めていたらしいです。量にすると、大体一合で、今の私と同じですね。
百歳を過ぎてもお酒を楽しめるなんて、すごくステキ。
私もそんなおばあちゃんになりたいな。
それでは先生、どうもありがとうございました。