第20回 “國酒”本格焼酎・泡盛、アジアに向けて発信!
マレーシアの首都 クアラルンプールでセミナー・試飲会を実施
日本酒造組合中央会は、2月18、19日、現地の酒類卸・小売、一般消費者に向けてセミナーと試飲会を行い、計約150人の来場者は、本格焼酎・泡盛の魅力を体感した。
熱心に質問する参加者
マレーシアは近年経済発展も目覚しく、ここ数年、約5%の経済成長を維持している。日本からの焼酎・泡盛の輸出額(焼酎甲類乙類合計額)は過去5年で約3倍に増加し、現在、輸出国としては第5位。建設ラッシュが続く首都クアラルンプール(以下愛称“KL”で表記)はマレー系、中国系、インド系の三つ民族を中心に、様々な民族から成る人口約180万の、東南アジア有数の大都市であり、本格焼酎・泡盛の消費量もアジアで上位に位置する。
今回のセミナーでは、講師をつとめた当会・濱田理事は、本格焼酎・泡盛の知識を正確に伝えることを意図し、英語で講演。講議は起源や原料、造りや飲み方、健康効果など内容は多岐に渡った。
各蔵元と会話を重ねながら試飲
参加者からは「何故ノンシュガーなのに甘い香りがするのか?」「常圧蒸留と減圧蒸留について詳しく教えて欲しい」など、多くの質問が飛び交い、関心の高さが伺えた。
試飲会では、参加蔵元11蔵が揃えた様々なタイプの本格焼酎に来場者は興味と驚きを示し、終始蔵元への質問が絶えなかった。
姫野ミッション団長は「イスラム圏ということもあり、マレーシアは禁酒が基本ですが、多民族国家でもあり、特に中国系の人達などは大いに飲むし、トレンドや健康効果にも敏感です。
近隣のアジア諸国と比べても国民の所得も高く、これからどんどん発展していく国です。日本人に対しての印象も良いですし、今回は第一歩ですが、今後イベントやメディアなどで知名度を上げることで、本格焼酎・泡盛の需要を拡大することが期待できると思っています」と抱負を語った。
2014クアラルンプールレポート
本格焼酎・泡盛はマレーシアにとって新鮮なお酒!味わい、健康効果、しっかり伝えてほしい」
KLのシンボル、ペトロナスツインタワー(右)と建設中の高層ビルも目立つ中心部
セミナー・試飲会での参加者の声と、本格焼酎・泡盛を扱う酒販店、料飲店で伺った現地の酒事情を紹介します。
本格焼酎・泡盛セミナー・試飲会参加者インタビュー
酒販店 Jetさんと同僚の方
「私達酒販店への情報も少なかったので、今回は本当に勉強になりました。本格焼酎・泡盛は水やお湯で割る食中酒であること、健康効果などの魅力を新しいものに敏感な2、30代にPRしていきたい。これから伸びてゆくお酒だと思います。」
酒類販売員 Dingusさんと同僚の方々
「大手日系のショッピングセンターで働いています。扱っている本格焼酎・泡盛は6、7種。ほとんど日本人が購入していますが、店内での日本紹介イベントに出して、良い感触を得ています。認知度を高めるためには、イベントで知ってもらうことが第一ですね。」
会社経営者 Seing Liongさんと奥様、お友達
「普段はブランデーを飲んでいるので、樽貯蔵焼酎が一番好みです。旨い!このようなイベントも大事ですが、私のお勧めは結婚式。中華系の結婚式では、参加者は千人ほどで普通クラスで、出されるお酒はビール、ワイン、ウイスキー。本格焼酎や泡盛は珍しいのでイベント性もありますし、味わいも絶対気に入ってもらえると思います。PR効果抜群ですよ。」
銀行員 Wynn Chewさん
「初めて米焼酎を飲みました。日本的な、独特の風味で好きです。銀行で行う顧客への感謝イベントなどで、是非日本文化と一緒に本格焼酎や泡盛を紹介したいですね。新しい企画として顧客も喜んでくれること間違いないです。」
会社員 Wallace Ongさん夫妻
「一番のお気に入りは梅酒です。今まで飲んだものとは風味が断然違い、素材が生きている感じです。本格焼酎・泡盛はロックも美味しいですが、本拠地がニュージーランドなので、講座で習ったお湯割りも寒い日に飲んでみたいです。」
食品輸入会社 JustinWongさん
「本格焼酎は日本の友人に勧められて飲みます。“二日酔いしにくい酒”と教えられ、何度か飲むうちに納得しました。酔い覚め効果、健康効果を伝えれば、必ずこの国でも人気が出ますよ。」
司会を勤めたコンサルタント業 NizamAminさんのコメント
「東京に4年間留学していた時に、すし屋でバイトしたのですが、そこで学んだ、日本のお酒文化、注いだり注がれたり、お酒によって居合わせた者同志が親しくなる、距離がぐっと縮まるという風習が素晴らしいと思いました。格式ばらない、皆で楽しむ日本の蒸留酒、本格焼酎の文化をもっとマレーシアの人達に知ってもらいたいですね。」
現地酒販店訪問
2004年からKLで酒販店を営む大原健嗣さんに話を聞きました。
大原健嗣さん
お客様は日本人が9割で、リピーターも多いです。銘柄数は約30種。私自身、九州まで行って、蔵元さんで選んだ銘柄もあります。試飲して楽しんでもらい、選んで頂いていますが、この国の事情もあって、入荷したくてもできない銘柄も多いですね。
世界で本格焼酎・泡盛を広めるには、健康効果をしっかりと打ち出すことが大事だと思います。今やどこの国も健康指向です。今までの情報発信では、数値や学術的な根拠が明快に伝わらないことで、アピール力を欠いてしまう。健康効果のデータを海外雑誌などに積極的に掲載して、全世界の人に「本格焼酎・泡盛は健康に良い」ということをはっきり認識してもらうことが一番だと思います。
現地料飲店訪問
中心オフィス街に面してある 勘 八
1973年創業、KL住人であれば誰もが知っているといわれる最老舗の日本食料飲店で、店鋪ディレクターの矢部氏と、料理長の柴田氏に話を伺いました。
「日本への関心度高い今が好機!」矢部晴美氏
日本食レストランは急速に増えていますが、”なんちゃって日本食“も健在で、開店しては潰れることを繰り返しています。勘八が40年以上も続けてこれたのは”しっかりした日本食“を提供してきたからだと思っています。今では『ベスト・ジャパニーズ・レストラン』にも選ばれ、首相にもご来店頂いています。
マレーシアではやはり、本格焼酎・泡盛の知名度はまだまだです。ブランド志向が強く、お酒も同じ銘柄しか頼まないなど、受入れる資質に欠ける点もありまが、以前より日本文化への関心が高まっているのも事実です。國酒としての本格焼酎・泡盛を知ってもらう、良い時期が来ているといえます。
「日本のもてなす心で伝えることが大切」柴田紀和氏
当店の一番人気は、その場で焼く鉄板焼き。素材を活かす日本風です。お客様の大半はマレーシア人で、日本人は約1割。スタッフもほとんど地元の人なので、日本料理のことはもちろんですが、まず、接客するおもてなしの心を教えています。スタッフを教育することが、お客様を育てることにも繋がっています。
本格焼酎・泡盛の銘柄は6種ほど。現地の人は甘辛いものや甘酸っぱいものを好みます。そうした味わいには、本格焼酎がよく合います。料理に合うお酒をという日本の食文化でおもてなしし、本格焼酎・泡盛の良さを知ってもらいたいですね。