うんちくBOX

第5回 昔の文献にみる本格焼酎&泡盛

 「南蛮の称呼は沖縄の人に聞かせたら直(す)ぐ古酒を貯える壷を連想する」(『月刊琉球』昭和13年)。そう記したのは、琉球王朝の末裔、戦前の沖縄を代表する文化人であった尚順(しょうじゅん)男爵です。

 この場合の“南蛮”というのはいわゆる“琉球焼”といわれるもので、タイやベトナムで作られた焼き物ではありません。昔から琉球の人々は、琉球製の南蛮壺を使って、古酒を貯蔵してきました。

 どんな壺でもよいわけではありません。自ら古酒の造りと収集に努めていた尚順は、「(容器が小さい割りに口が広いと)酒精分の放散が多くなって、少しでも仕次を遅らすと忽(たちま)ち腐水(マーサ)になってしまう」と解説しています。

 琉球の貴人たちが、子々孫々珍蔵してきた古酒のなかには、3世紀もの歳月を経たものもあったといいますから、その南蛮壺も精選されたものであったことでしょう。

 現代でも南蛮“甕”という名称はよく耳にしますが、酒造り専用の仕込みも貯蔵もできる大きなものが一般的です。同じ“南蛮”でも、琉球焼の壺を指していた時代、古酒が宝とされた時代の記憶を忘れたくないものです。

 「南蛮焼が有る為に沖縄では何処にも無い泡盛の古酒を作って、世界に誇る事が出来るので、此(この)点に於(おい)ては南蛮焼も郷里の為に本望を遂げたとも言い得らるるのである」。この何とも誇らしい尚順の語り…琉球泡盛の伝統の奥深さ、力強さを感じずにはいられません。

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