本格焼酎&泡盛・産地巡り

第28回 芋焼酎・大都市の日常酒へ

 海にとっても近い鹿児島市。観光気分で街をぶらぶら歩くといつの間にか港が見えてきます。港の近くには公園があり、気持ちの良い、市民の憩いの場となっています。その公園の近くに鹿児島最大手の1つの蔵元さんの事務所があります。お話を聞いてみました。

適正価格で芋焼酎が楽しめる鹿児島の料飲店

適正価格で芋焼酎が楽しめる
鹿児島の料飲店

 「少し前でしたらプレミア的な焼酎(甕仕込みや初垂れなど)、値段設定の高い焼酎が大都市での売れ筋でしたが、最近は蔵のレギュラー酒が良く出ています。話題性や新しいもの欲しさのための存在だった芋焼酎から、消費者個人の判断で、毎日飲める日常酒になったという事です。プレミアは基本的に日常酒にはなれない。飽きられてしまう可能性もあると思いましたが、最近、芋焼酎は日常の晩酌の中に入っていこうとしています。毎日飲む必要は無い。一昨日は日本酒を飲んだ、昨日はワイン。じゃあ今日は芋焼酎にしよう。そういう日常酒になりつつあることが嬉しいですね」
 「ブームの反動が来るかもしれないと思った時期があった」と蔵元さんは言います。何故来なかったのか。それは『製造者の原則』ではなく、『消費者の原則』を優先させた事。表示をしっかりとし、値引き合戦を行うのではなく蔵元がおのおのの路線でイメージ作りを行い、消費者との信頼関係を持つことを一番に考えたそうです。大都市でも地位を確立した芋焼酎。不安は無いのでしょうか?
 「最近、東京の飲み屋さんで芋焼酎があったので頼みました。鹿児島では焼酎5対湯5が基本(以前は6対4)。多分そこでは焼酎2対湯8くらいだったのでしょうか。どう考えてもお湯みたいで、焼酎とは思えなかった。そこで濃くして下さいって言ったら『ダブルですか?』と言われました。ダブル!?芋焼酎は庶民の飲み物です。こんな考え方をする店に芋焼酎を置いてくれるなと思いましたね。焼酎は楽しくおいしく飲んで欲しい。しかし、プロである方々には正しい知識を持って頂きたいのです。それがこれからの課題ですね。数年前から酒販店さんなどを対象に、蔵で製造過程を知ってもらうための研修を開いています。大人数を呼べるわけでもありませんから、すぐに効果が出るものでもありませんが、今こそ必要な事だと思っています」。

 鹿児島で飲むお湯割りの美味しさは自分も含め、1回経験した人は忘れられません。東京でもこのおいしい芋焼酎を飲めるのも間近と信じ、郷土料理を肴にロクヨンのお湯割をちびりちびりと、至福の時を過ごすのでした。

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