本格焼酎&泡盛・産地巡り

第5回 台風と芋不足・八丈島の困難

 八丈島一日目の夜、蔵元の皆さんと島酒の試飲会(飲み会)にご一緒させていただきました。八丈名産の飛び魚の刺身、明日葉(あしたば)に舌鼓を打っている時、「これを食べないと始まらん」と蔵元さんの一声。焼いたばかりの熱い飛び魚とムロアジのくさやを手でちぎり始めました。(くさやは手でちぎるのが一番!とのこと)まず一口、も~んときます。決して得意な味ではありません。しかし、甘さの少ない落ち着いた味の島酒と一緒だからこそ、くさやと絶妙に合い、思いもよらずくさやに何度も手が伸びました。島酒とくさやの相性は完璧!
 蔵元さんに八丈島で島焼酎を造ることの苦労について伺いました。「天気に左右される事ですね。台風がきたらどうしようもない。船で原料の麦、酒瓶、飾り箱も移入していますので、運搬料がかかる上に、届かないのではもう製造自体が出来ない。4、5日船が出ないことだってありますね。鳥も通わぬ島と言われる由縁です。それと原料芋の不足。地元の芋で造る芋焼酎は絶対量が少ないのをカバーして何種類もの芋を混ぜて製造します。昔芋畑だった場所は、ほとんどが経済効果の高い観葉植物畑になっていますので、あちこちの農家からあるだけの芋を少しずつ購入する蔵、芋を育てる蔵、また、千葉や茨城産の干し芋を使用する蔵もあります。

美しい八丈小島 ひとたび台風となれば焼酎製造は…

美しい八丈小島 ひとたび台風となれば焼酎製造は…

 常圧蒸留にこだわり、濾過技術を活かすことによって強い香りを和らげる蔵もあれば、味がまろやかになると言われる銅の蒸留器を使用する蔵、昔ながらの木の甑、麹室を使っている蔵、貯蔵にこだわる蔵、アロエなどの様々な焼酎を造る蔵など、島内5つの蔵が工夫し、それぞれが持っているこだわりによって、素晴らしい島焼酎を造っていることが分かりました。
 2005年5月現在、伊豆諸島のうち、本格焼酎を製造している蔵はここ八丈島に5つ、本土から一番近い大島に1つ、くさや発祥の地新島に1つ、伊豆諸島最南端の有人島の青ヶ島に1つ、合計8つの蔵元があります。太平洋に浮かぶ大小116の島のうち有人島は9島。その中で本格焼酎を造っている島は4島。台風の通り道である伊豆諸島で生活する事、人々に愛される島酒を造りつづける事はどれだけ大変なのでしょう。
 東京の島酒を知るため訪れた八丈島。島焼酎の素晴らしさと造り手の情熱を見ることが出来ました。次号からは南国の島、本格焼酎のルーツ・泡盛を求め、沖縄を訪ねます。

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