春秋謳歌

第1回 命のバトンタッチ

第1回 命のバトンタッチ

 春爛漫。ウグイスのさえずりに応えるかのように桜吹雪が舞い散り、田植えを終えたばかりの田んぼに花びらが舞い降りる。役目を終えた桜花がウグイスに、あるいは田んぼの稲に次は君たちに任せたぞとばかりに誇らしげに散っていく。この時期は命のバトンタッチが始まる季節でもある。稲が実るとサツマイモの季節。サツマイモは焼酎となって受け継がれ、そして今の季節、満開の桜の下で生きとし生けるものに乾杯となる。

 焼酎造りの伝統は焼酎杜氏により受け継がれ、杜氏たちの存在そのものが焼酎文化のひとつにもなっている。稲刈りを終えたお盆過ぎに真夏の焼酎蔵へ入る。夏から秋へ、そして冬へと目まぐるしく移り変わる気候と戦いながら、麹や酵母の様子を気遣い、毎日運び込まれてくるサツマイモと格闘しつつ、できあがってくる焼酎の味に一喜一憂する。いつまでたっても一年生という焼酎杜氏の存在は華やかに咲き誇る万朶の桜というよりは、ひっそりとしかし寡黙でたくましい山桜に似ている。

 今、その山桜が大きな役割を終えて静かに表舞台から少しずつ消えていきつつある。さて、後を誰に託すか。今春、鹿児島大学に山桜の後を継ぐみずみずしい苗をそだてることを大きな目的とする焼酎学講座が開講した。500年の歴史を受け継ぐ焼酎文化の語り部の育成と次代を切り開く人材の養成をと、業界の期待は大きい。見事にバトンタッチといきたいものである。

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