本格焼酎&泡盛・産地巡り

第31回 朝の光と蒸し米の蒸気に霞む

もうもうと蒸気が立ち昇る甑。目の前は真白だ。

もうもうと蒸気が立ち昇る甑。
目の前は真白だ。

 午前8時。朝の光を浴び、やっと暖かくなりつつある港の空気を感じながら蔵元さんに到着です。蔵全体はほの暗く、ひやりとしているのとは対照的に締め切った麹室(こうじむろ)は暖かく、お米特有のホッとする匂いがします。蔵元さんは半袖姿でこんもりとした米麹の丘を崩しながら、リズミカルに麹の塊を手の平でこねるようにほぐしてゆきます。実はこの作業、体験した事があるのですが手がとてもすべすべになりました。麹は、美肌効果があるのです。一段落したら蒸米準備、甑(こしき)から湯気が立ち始め、甑上部に布をかぶせロープを巻きます。その布が昇ってゆく蒸気の力でどんどん膨らんで丸く張ってゆき、その布の上にシャベルとバケツを置く蔵元さん。蒸気で殺菌消毒するのだそうです。蒸気は布をぬけて力強く上昇し、梁の部分はもちろん、蔵全体が湯気で霞んでゆきます。昔、蔵の2階部分に住んでいたという蔵元さんは早朝、蒸気が部屋の中にまで入ってきて、寝ていられなく、それが目覚ましになっていたそうです。それにしても心地良い蒸し米と蔵の香り、湯気で蔵は温まり、気持ちの良い湿度です。これに起こされるのも少し羨ましいと思ってしまいました。

 港近くの小さな蔵。全ての麹を麹室で育て、仕込み甕は大正時代からのものです。最近床をバリアフリーのためコンクリートにして台車が利用できるようになりました。「こだわり過ぎずに焼酎造りをしてゆきたいです。使用できるものは使用し、使えなくなったら考える。変えたくなければ変えない。新しくして良かったらそのまま、駄目だったら元に戻す。それがうちには合っているのです」蔵元さんは語ります。
 蒸米の香りに触発され、お腹が空いてきたのでお昼ご飯。今の時期、壱岐は寒ブリです。身に脂の“さし”が綺麗に入ったピンク色。口に入れるとトロリとした旨味の強い脂と弾力のある身が舌の上をぷりぷりと刺激します。また、壱岐名物“ひきとおし”もお勧めです。ごぼう、こんにゃく、野菜に歯ごたえの良い地鶏、そして最後にそうめんを入れた郷土鍋。甘く、濃い目の味付けが米特有の甘い香りのする壱岐の麦焼酎と相性抜群です。

 長崎県壱岐島には2006年冬現在、7つの焼酎蔵があります。蔵には若い人が目立ち、最近、島から出てゆく人が減っているといいます。海の幸と自然に恵まれ、麦焼酎の伝統を受け継いだ壱岐の人々。蔵元さんの「壱岐が良い。東京に行くと疲れるよ」という言葉に不覚にも納得してしまいました。

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