春秋謳歌

第60回 晴れて「焼酎」認知

第60回 晴れて「焼酎」認知

 ついに「焼酎」が市民権を得た。酒は酒税法で規定されていて、そこに書かれている名称は戸籍上の名前に相当することになるが、その戸籍簿に記されていたのは「焼酎」ではなく「しようちゆう」だった。「しょうちゅう」ではなく、すべて大文字表記である。これまで「焼酎」は法律用語として認められていなかったのである。理由は、常用漢字に「酎」の文字が認められていなかったためだが、2010年に常用漢字の仲間入りし、今年度の酒税法改定以降、「焼酎」の文字が使われるようになる。新聞や書籍ではすでに「焼酎」の文字が氾濫しているので、何をいまさら、といった感じがしないでもないが、市場での普及が評価され、晴れて認知されたことを思えばその意義は小さくはない。

 思えば、「焼酎」認知の過程は多難なものだった。かつては、焼酎はもともと「焼酒」であり、「酒」の中華音は「ちう」であることから、いつの間にか、字義と音訓を混同.附會して「焼酎」なる日本製の熟語を作り上げた(石橋四郎「和漢酒文献類聚」)とされてきた。ところが、昭和29年に、鹿児島県大口郡山八幡神社で発見された1559年に書かれた落書きに「焼酎」の文字が出てきて,初めから「焼酎」の文字が使われていたことが判明し、通説が覆ったのである。ちなみに焼酎とは「味のある蒸留酒」という意味である。

 また、焼酎が南九州の地酒に甘んじていた時代、焼酎は安酒の代名詞のように思われ、呼び方を変えようという動きもあった。当時、筆者が思い浮かべたのは「栄酒」であった。というのは、古記に「せうちうは栄酒の転音なり」とあったからである。「酒」の由来は「栄え楽しむ飲料」が縮まって、「さかえ」が「さけえ」になって、「さけ」に転じたとする説がある。焼酎が「栄え楽しむ酒」になればと思ったが、今では「焼酎」が自ら汚名挽回に成功し、「しようち ゆう」という、まま子扱いされたような呼称を跳ね除けるまでになったことを喜ばしく思っている。

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