春秋謳歌

第40回 和食の無形文化資産登録に思う

第40回 和食の無形文化資産登録に思う ひんやりとした冷気になんとなく物悲しさを感じる季節になったが、焼酎蔵からはサツマイモの甘い香りが立ちのぼり、今がわが世の春とばかりに熱気があふれだしている。11月1日の焼酎の日を過ぎれば、今年の新酒が市場をにぎわす。旬の肴に新酒のお湯割りとくれば、これぞ焼酎の旬。冬の夜長も加勢して、ほろ酔いの中につくづく日本人でよかったと実感できる時間が過ぎてゆく。

 日本の酒は四季折々の食材によって趣を変え、いろどりを添えられる。食あっての酒である。その和食がユネスコ無形文化遺産に登録される運びとなった。その理由は、日本食文化が、四季や地理的な多様性による「新鮮で多様な食材の使用」、「自然の美しさを表した盛り付け」などといった特色を有しており、日本人が基礎としている「自然の尊重」という精神に則り年中行事と密接に関係し、家族や地域コミュニティのメンバーとの結びつきを強めるという社会的習慣を有しているからだという。

我が家の食卓

我が家の食卓

 旬の食材の新鮮さを生かす和食によって、焼酎や清酒といった和酒は磨かれ、育てられてきた。和食の傍にはいつも和酒があった。和食と和酒はいつもセットになって、日本の食文化を築いてきた。となれば和酒も無形文化遺産の仲間入りということになる。
 
 焼酎や清酒が「國酒」となり、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されると、世界に冠たる日本食文化に携わる関係者には一層の自覚と誇りが求められる。だが一方で、ホテルやレストラン店舗でメニューと違う食材を使用していた嘆かわしい例が相次いで報道されている。消費者庁が景品表示法違反の有無で調査しているというが、作り手と消費者の信頼関係は法に勝るものでなければならない。グレーゾーンは法にあっても、信頼関係にはありえない。法はなくても、信頼を損なわないのが日本文化の根底をなすものであり、日本人の美徳のひとつであったはずである。

コメントは受け付けていません。

酒蔵ツーリズム

焼酎検索 知りたいことが良く分かる

<< TOPへ