春秋謳歌

第48回 絆の酒・団らんの酒

第48回 絆の酒・団らんの酒 福岡であった焼酎大試飲会には圧倒された。700近い銘柄がずらりと並び鹿児島県内の88蔵元が質問に答えながら試飲をすすめている。有料にもかかわらず2,600名もの人たちが会場を埋め、昼1時から夜8時まで列が途切れることがない。地元の愛飲者が多いのはもちろんだが、関東地方から夫婦で来られた若い小売店の方にもお会いした。これだけの焼酎を一度に試飲できる機会は他にないので、ぜひ自分でこれぞという焼酎を見つけて帰りたいという。“どういう焼酎がいいと思いますか”と聞かれて、まずは蔵元の造りに対する姿勢をよくみてください、とお答えした。顧客に自信を持って奨められる焼酎は蔵元の姿勢から生まれるからである。会場のあふれる熱気に、身近に焼酎と接してもらう機会をつくることがいかに大事かを痛感させられた。

大試飲会に並べられた鹿児島産焼酎

大試飲会に並べられた鹿児島産焼酎

 女子大生に教えられたこともあった。あるセミナーで、清酒を飲んだことのない女子学生が若者に飲んでもらうための提案を発表したときのことである。女子大生が清酒を飲まない理由は“おじさんぽい・お父さんが飲むイメージ”、“後味が苦くて匂いがきつい”、“他のお酒の方が飲みやすい”からだそうである。そこで“飲みやすい”、“おしゃれ”、“かわいらしい”を切り口に日本酒カクテルを開発し、和酒の“自然の豊かさ”の象徴として、木材酒器を開発したことの発表であった。興味深かったのはその後の意見交換であった。“この取組みによって、何か変わりましたか”という問いに対し、“父親との距離が縮まりました”という答えが返ってきた。プロジェクトを推進する中で、彼女らは全員が唎酒師の資格を取得し清酒の知識が増える中で、父親と共通の話題ができ、酌み交わす楽しさを知ったというのである。

 酒はコミュニケーションツールとよく言われる。人と人を結びつけ、人と社会を結びつける。その大本が家庭の団欒から築かれるとすれば、若者の酒離れを危惧する必要はない。

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