春秋謳歌

第39回 腕のみせどころ

第39回 温故知新 9月は芋焼酎造りにとって年の始まりである。設備の点検は万全か、芋の出来は、気候はなどと胃の痛む日が続く。毎年のことだが、今年はいささか異常な年明けになりそうである。とにかく雨が降らなかった。梅雨らしい梅雨がなく連日の日照り続きに大地はカラカラ。台風が待ち遠しく、新聞には雨乞いの記事を見るまでになった。

 だが、猛暑をご馳走にして元気いっぱいなのがサツマイモである。実際、今年は肥大も早く、例年になく豊作になるのではと期待が大きい。ただ、あまりに続く日照りに葉っぱが黄色に変色しつつあり、さすがのサツマイモも耐えきれないのではと心配も募る。焼酎造りは南国の暑さとの戦いの中から生まれたとはいえ、今年の過酷な夏はサツマイモにとっても想定外といったところである。

今年の芋はおいしそう

今年の芋はおいしそう

 一雨欲しいと思っていたところに9月上旬、激しい雷と豪雨が襲った。一日目の雨は待ちに待った慈雨だったが、降り続くといい加減にしてくれと恨みたくなる。畑がぬかるみ計画通りの集荷に支障をきたしかねない。気まぐれこの上ない今年の夏である。
 
 9月といえば真夏の暑さである。この暑さと気まぐれな天候の中、サツマイモや微生物を制御していくのは並大抵のことではない。だが、その手綱さばきこそ杜氏の腕の見せどころとあって、何事もなかったかのように淡々とこなしているように思わせながら、胃はきりきりと痛む毎日が続くことになる。

そこには杜氏を駆り立てる魔力も潜んでいる。過酷で想定外の環境はときに思いがけない味わいを生み出すことがある。暴れ馬を乗りこなす快感があり、新しいものを生み出す期待と悦びがそこにある。勝手に動き回ろうとする幼子をしつけ育てる親としての苦悩と楽しさが共存している。

苦労が多いだけ深みのある焼酎が生まれる。さまざまな個性に対する親のしつけの違いがあるからこそ、中小蔵はそれなりの存在感を放っているのである。

難産の末に生まれる子供を見るのが楽しみである。

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